舞台には大きな台(テーブル)がおかれている。この台が現代ではBAR「ホームレス」になり、江戸時代では「深川安楽亭」や長屋の一室になる。つまりこの物語は、現代と江戸時代が交錯しながら展開していく。
BAR「ホームレス」にはママである咲子と、高宮がいる。高宮は客のようでもあり、咲子の恋人のようでもある。そこへママの娘のゆりとヤクザまがいの仕事をしている工藤が現れる。二人はゲームセンターで遊んで来たのだという。客の川本が入って来る。彼はひどく険しい表情をしてウイスキーをたて続けに飲み干し「ここはホームレスしか入れないんだろうな!」と叫ぶ。「あんたはホームレスなのかい?」と工藤が聞くと、川本は「正真正銘のな」と笑い出す。こうして物語が始まる。
ゆりが「どうしてホームレスなんていう名前にしたの」と尋ねると、咲子は「昔、この辺りに『深川安楽亭』というホームレスが集まる酒場があったのよ、だから」と答える。高宮はゆりに「昔も今も、たいして変わっちゃいないんだ。街や物はどんなに変わっても、人間だけはそう変わるもんじゃないんだという。そして高宮と咲子はこんな話がある、と「深川安楽亭」「その木戸を通って」「あすなろう」「おたふく」などの物語を語って聞かせる。ゆりへというより、何かわけがあって、大きな問題を抱えこんでいるようにみえる客の川本に____。 |