突然引退したスター俳優だった荘司が、ブドウ園を買ってワインを造ることを決意した。そして合わせて手に入れた家を2ヶ月ほどかけて自ら改築していた。その家がまもなく完成するというところから、この物語が始まる。
彼が頭を悩ませているのは、つい先日から手伝いたいとおしかけて来ているかつてのファンだった女の子のこと、それにこの事業が成功するかどうかをドキュメンタリィとして撮るという、テレビの取材班のことである。どんなに拒否しても強引にカメラを廻し続けているのだ。
荘司が一番楽しいのは、毎日のように現れるブドウ園を売ってくれた男からブドウ栽培やワイン造りのことを教えてもらうことだった。彼はどういうわけか離婚して厭世的な気分になりブドウ園を手放したらしい。荘司のワイン造りが軌道にのるまで面倒をみてくれると言う。
いよいよ本格的なブドウ栽培が始まった。
ブドウが芽をふき花をつける間に―――様々な人間模様が織りなされていく。
或る日、ふらりと荘司のかつてのマネージャーが現れる。追いかえそうとする荘司に「社長が行って来いって言うんですもの。失敗するにしろ成功するにしろちゃんと見届けろって。」
或る日荘司がワイン小屋に入っていくと、テレビの取材班が煌々とライトをつけてワインの貯蔵樽を撮影していた。おまけにディレクターはワインを勝手に試飲している。「ワインは一定の温度を保たなければならないんだ!」怒った荘司はディレクターと喧嘩を始める。皆んなの必死のとりなしでなんとか収まった荘司だっただが・・・。それから女優志願の少女の家出など様々なことが起こるが、ブドウはたわわに果房を実らせていく。
そしてある日の朝、荘司が外に出ると信じられないことが起こる。7月だというのに石つぶてのような雹(ヒョウ)が降ってきたのだ。ブドウは全滅―――?荘司はブドウ畑に茫然と立ちすくむ。そして―――。 |